お茶会 ; 第3回 栄 茶会
芸術の秋!到来ですね
第3回 栄 茶会の報告をいたします!
第3回 10月22日(土)
鈍翁と三渓のにせもの話
講演 館長 森村宜高
明治という新しい日本を経済の面で近代化させ、現代に続く企業群を作り上げた益田孝こと鈍翁(どんのう)は日本美術を世界に認めさせた功績でも大きいものがあります。
鈍翁は明治7年にのちに三井物産となる貿易会社をはじめ多くの三井グループの企業やその企業を経営する人材を育てました。また、そのきっかけとなった井上馨などの明治の元勲といわれる人々にも強いパイプがあるだけに終わらず、混乱で評価が落ちてただ同然であった文化財の国外売却を阻止して、成功した財力をつぎ込んで購入しました。
原 富太郎こと原 三渓(はら さんけい)も同様に鈍翁に負けじと文化財を購入し、三渓園と呼ばれる自宅を公開したりして文化への理解が深まる活動をし、関東大震災の折には私財をなげうって救済活動をしました。
そういった活動をする一方で古来からの茶道に仲間として誘い、さらに文化財への関心を茶道を通じて行いました。鑑賞の美だけである西洋美術品ではなく用の美をも持つのが茶道空間であるという信念で、新しい茶道、茶の湯を通じて美を鑑賞するという境地で明治、大正の成功者たちを招き、茶の楽しさを広めました。
そんな中、80歳になっていた鈍翁はなかなかの目利きとなっていた三渓が、長年欲しがっていた香合に目がくらんでニセモノにほれ込んだことを聞きつけました。
鈍翁三渓ともに交友の深い森川如春、田中親美というその道の権威(森川如春は書、陶器をはじめ日本美術への鑑識眼が鋭く、田中親美は王朝時代の美術修復復元の第一人者)に使いさせて、そのニセモノを納めることで一泡吹かせようと計画しました。
2人の茶器の目利きがすすめるので疑う余地はありませんので、三渓がいざ金を払う段までスムースに事が運びましたが、さすがニセモノの代金を受けるときには良心がとがめたかその場でウロウロして持ち込んだ2人が逃げ出し、芝居がばれてしまいました。
結果的にいたずらの手打ちとして、気のおけない茶仲間でもあり、さらにその顛末をネタにして茶を楽しんだという茶会記と、その香合が昭和2年からなんと80年ぶりに、講演とともに公開されました。
殺伐としてその後戦争に突き進んでゆく大不況の状況であったその頃ですが、現役を引退した老人同志のバカ話は、いつも深刻だけではなく時に楽しさを持つという、現代のわれわれにも必要な心の余地や豊かさを持ってほしいという先人の警句かもしれません。
講演後、茶会となり、鈍翁ゆかりの茶道具とともに、ニセモノを焼いた作家の作品もあわせての道具組で、参加した皆様には話題が尽きない一日となりました。
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